治療院なんてものをやっていると、いらっしゃる患者さんの多くは何かしらの「痛み」に悩んでいることが多いです(身体の動きそのものの改善、コンディショニングとか、どこに行けばいいのかよく分からない、という症状の方も多いですけれど)。
よく聞かれるのは、そもそも何で痛いのか、というお話です。
うちのような個人でやっている怪しい治療院を見つけ出してわざわざお来しくださる方の多くは「他所で診てもらったけれど、どうも治りが悪い」とか「画像検査しても何も異常が見つからない」というような場合がとても多いです。つまり、色んな原因について聞いてきたけれども、治らなかった、ということです。
レントゲンやCTで問題が見つからなかったのに、なんで痛いのか。
背骨や骨盤を整えてもらったのに、なんで痛いのか。
記憶や、日ごろの考えた方が悪いと言われて色々やったのに、なんで痛いのか。
こういう時は、いちばん基本的なことに立ち返ります。
身体の構造を学ぶのが解剖学。
身体の機能を学ぶのが生理学。
痛みを感じるのは人体の「機能」ですから、生理学の中に答えを探します。
ここでは医学部の学生も使う生理学の教科書『標準生理学』にご登場願いましょう。
身体の奥の方から感じる痛み、深部痛についての記述です。
標準生理学 第8版 p227
深部痛
筋、腱、関節や骨膜などに生じる痛みをいう。うずくような痛みである.
皮膚の痛みと違って,その局在は不明瞭である.
外傷や感染によってこれらの組織が損傷され,炎症を起こすと表面からの触刺激や近くの筋の収縮によって痛みが起こる·
身体のどこかに痛みがあったり、心労などの精神的緊張が続くと、身体の一部の筋に異常な持続性の筋収縮が起こり、やがて筋肉痛を起こすことがある。
通常の筋運動時にも、同時に筋の血流を止めると痛みが起こる。
筋収縮時の代謝産物として発生する乳酸やK+イオン,セロトニン,ブラジキニン,ヒスタミンなどが過剰に蓄積して痛みを起こすとされている。
(改行引用者)
かいつまんで言うと、
筋肉が硬くなると痛みが起こる
ということです。
馬鹿げた結論に感じるでしょうか?
でも、説明としては実にスジが通ります。
画像検査で問題ないように見えるのは、レントゲンやCTにはそもそも筋肉が映らないからです。
骨盤や脊椎を調整して痛みが取れる場合は、その時に問題だったコリがちゃんと緩んだから。
逆に、見た目では骨格が整ったのに痛みに変化がない場合は、問題を起こしているコリがとれていないのです。
心理療法が慢性痛に効く場合があるのは、上の引用部にもあるように「精神的緊張が続く」ことがコリを生むからでしょう。
もし痛みの直接の原因が筋肉の緊張であれば、そして、精神的緊張が取れてもその筋肉の緊張が抜けきらないのであれば、まだ痛いはずです。逆に記憶やストレスだけで痛いならば、例えばなぜ口内炎の痛みの記憶で口の中が痛くなったりしないのでしょうか(※まれにそういう方もおられるかもしれませんが、ぼくが調べた範囲では今のところおられません)。
たかがコリ、されどコリ。
コリの影響で神経や血管の機能が阻害されれば、痛みが起こることはもちろん「まっすぐ立てない」とか「見えないはずのものが見える」とか、一見ものすごい難病を抱えたかのような症状が起きることもしばしばです。
コリさえうまく取れれば痛みは減り、可動域は増え、柔軟性は増します。
いいことづくめです。
怪しい治療法に飛びつくよりは、まずはコリを外してみたほうがいいですよ、というお話でした。
※『標準生理学』に、上記のような記述があるという話は、手技療法「緩消法」の開発者、坂戸先生から伺いました。
感謝いたします。