1年ちかく前に皮膚について書いた記事の中で書きますと言っておいて、書いたものの公開していなかった記事です。
今更ながら公開しておきます。
皮膚に関連しておススメの本を、備忘録を兼ねて、ここに紹介しておきます。
1冊目は資生堂の研究者である傳田光洋さんの『第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界』という本です。この本は、身体をひとつの情報処理システムとしてとらえた場合の、皮膚が果たす役割の大きさについて述べられています。
皮膚が防御装置でもあり、感覚器でもあり、自我の形成にすら関与している、といったことが明らかになっていき、脳中心の身体観をひっくりかえして、皮膚を主役にした身体観を描き出していて、目からウロコでした(発生まで遡ると、皮膚と脳は同じ外胚葉から分化する、という点も面白いです)。
もう1冊は『タッチ (神経心理学コレクション)』という本で、書くまでもないですが、弟のほうが出来がいい双子の兄弟も、新体操をやっている幼馴染の女の子(声:日高のり子)も出てきません。「触る」時に何が起こっているかをとことん掘り下げた本で、例えば「何で自分で自分をくすぐってもくすぐったくないのか」とか「点字を読んでいる人の脳の活動を計測すると、視覚野に反応があるぞ」といったお話が色々ちりばめられています。こちらは専門書なのでやや難しいですが、人に触る商売をやるなら読んで損はない本だと思います。
あ、勢いでついでにもう1冊紹介しますと、その名も『皮膚-自我』という、精神分析学の観点から皮膚の重要性を論じた本もあります。自我と皮膚との関わりを示す症例の数々はかなり衝撃的で、「粘着性の紙で身体を覆わないと安心できない症例」や、「皮膚に苦痛を与え続けることでしか自我を保てない症例」など、「今度はそう来たか」と思わされるものばかり。不安や過度の緊張を和らげるために、ハグマシン(抱き締め機)なるものも古くから考案されていたりしますが、そうしたものの理論的根拠になるような本ですね。原著がフランス語ということもあって、ちょっと読んだ感じはとっつきにくいですが、哲学や心理学が好きな方は、挑んでみると楽しいかもしれません。
蛇足
ちなみに、ハグマシンっていうのはこんな感じの機械です(リンク先参照)。