ほぼ毎週、メンテナンス目的でお越しになる患者さんがおられます。
 かなり肉体も頭脳も酷使するお仕事で、疲労回復しやすくするために、手技療法と吸玉療法を併用しています。

※吸玉療法というのは、吸玉と呼ばれるカップを、中の空気圧を陰圧にして皮膚にあてがい、吸い玉に皮膚や筋肉を吸い上げさせ、血液やリンパ液等の循環を改善しようという治療法です。

最近はオリンピック選手なども使っているのがその界隈では話題になっておりますが、古くは中国で動物の角などの空洞を使っていたそうで、その名残で吸玉は「吸角」とも書きます。

 ある日、その患者さんの背中、必ず吸い玉を当てるポイントを見ると、その部分だけ背中の毛が濃くなっていました。ふーんと思っていると、治療の回を重ねるごとにだんだんとそれが濃くなっていきました。

 ある日、とうとう患者さんご自身から、「吸い玉のところに、毛、増えてますよね? 家族にも言われたんですが」とのお言葉が。使用前使用後の写真こそ撮っていませんでしたが、ご本人を含む複数人が認めるのであれば、どうやらこれは間違いなさそうです。

 吸玉療法は、原理的には表皮側に陰圧をかけて血液等を集めるのですから、毛根にとっては「養分」が集まり、実に発毛・育毛には良さそうです。そんなことから、頭部の薄毛やハゲに悩む人にも、吸玉は有効である可能性が極めて高い、と思います。もしかしたらハゲが解決できる、というのは社会的に強力なニーズのあるお話なので、これは素晴らしそうなのですが、さて困ったことに、二つの強力なハードルがあります。

 ひとつは、吸玉が吸着するように、まずは頭部の肌を露出する必要がある。
 つまり私のように、「髪を剃る必要があること」。得たいのであれば、まずゼロにする必要があるという、かなりの覚悟が強いられるお話です。余談ですが、私は一度剃った方が毛根が強くなる、と言われて20代の頃に剃ってみたらあまりに快適過ぎてそのまま毛根を強くする必要も感じなくなってしまった人間ですので、もはや増やしたいとは微塵も思いません。はい、余談です。

 もうひとつは、吸玉の弱点である「吸玉の痕跡が治療後しばらくの間、頭に出続けること」。
 オリンピックの水泳選手などが背中に赤黒い跡をつけて競技に参加しているのを見た方もあるかもしれませんが、色の濃淡や出る部位には個人差・体調による差はありますが、吸玉治療の後は3日~10日程度、あんな感じの跡が残ることが多いです。悪目立ち間違いなしです。

 以上の二つのハードルを飛び越えても、実験台になって試してみたい、という方は、こっそりご相談ください。
 今のところ、ハゲを治したいという患者さんにおずおずとご提案しても、GOサインが出たためしはないのですが(苦笑)。