季節の変わり目に増える顎の症状。

「ああっ、もう少し注意していれば、一回で治せたんじゃないか」

……という懺悔もこめた症例です。

患者:

30代女性(デザイナー)

主訴:

顎の開け閉めの際に、顎の左側から中央にかけてが痛い。
また、顎を大きく開こうと思うとつっかかる。
顎を閉じていてもずっと違和感がある。

所見:

左側の顎関節周囲、顎二腹筋、広頚筋、咬筋、側頭筋膜に緊張、圧痛あり。

左側の小胸筋、胸鎖乳突筋、板状筋、僧帽筋から左腕にかけても広範な緊張あり。

施術:

第一回

肩や首の圧痛点を刺激しながら顎を動かしてもらうと、痛みが2割程度マシになるとのことなので、まずは上記の緊張をとることに。

顎と筋膜系でつながりのある左側の首、肩、腕の筋を緩める。
→顎を閉めた際の違和感は消失して可動範囲改善。
 でもまだ顎を開くと痛い。

圧痛部位の筋肉を、逆側の筋肉の運動で緩める。
→可動範囲もさらに改善。痛みも10→6程度まで減少。

第二回

一回目の治療の翌日にはまた痛みが戻ってきたとのことで、前回治療したポイントは真犯人ではなさそう。
……ということで、真犯人となっている筋緊張を探します。

経絡でいう胃経、アナトミートレインでいう浅前線上を探ると、腹直筋上に著明な緊張あり。

腹直筋の当該部位をタッチして緩める
→顎の痛みが半減。

腹直筋周囲、錐体筋などを左側から体の中心側に向かって緩めていく。
その後に、あらためて顎周囲の筋肉を緩める。
→痛みがほぼ消失。極限まで口を開いた時にはまだ痛みは出るが、10→1程度まで減少。

 

考察:

二回目、腹直筋が顎に影響があることがわかった時に話を聞くと、
「もしかしたら腹筋体操やったからかも」
とのこと。

どうやら、ただ腹筋をやるのではつまらないので、スマホをいじりながら腹筋運動をなさっていた模様。
仰向けに寝ながらスマホを見るために首を起こした姿勢からの腹筋運動。
つまり、胴の前面から首の前面までひとつなぎに緊張しっぱなしの状態を作っていたわけです。

脚側の方向に引っ張られることで、カウンターで緊張して引っ張り返した顎周辺の筋肉。
その緊張が続いたおかげで痛みが生まれていた、という可能性が高いと思います。