別に肩こりに限りません。

腰痛も、頭痛も、辛い箇所そのものを
ターゲットに施術してもナカナカ良くならない
ことが多いです。

ですので、治療を受けに来て下さった方はだいたい
経験なさっていますが、私は基本的に、痛い箇所
そのものをナカナカ施術しないこともよくあります。

よく施術後に患者さんから、

「あんなところが痛みの原因とは思わなかったよ」

という言葉をかけられることがありますが、肩こりでしたら、
足、腕、腰、首、時には●●を施術することがあります。

なぜか、と言えば簡単「肩こりの原因は肩に無いことが
多いから」です。しばしば、肩こりは他の箇所の問題の
「結果」であり「被害者」である場合が多いのです。

極端な例では、うつやがん、内臓の問題などでも
最初の自覚症状は肩こりであることがしばしばあります。

もちろん、痛みを発する「加害者」をやっつけるつもりで
ひたすら肩の固いポイントをやっつける、という治療法で
良くなることもありますし、一概には言えません。私も
そういう方法を取ることもあります。

しっくりこない、という方には、たとえ話をします。
とてつもなく労働環境が劣悪な会社(当世風の
言葉で言えばブラック企業ですね)があるとして、
その一社員が身体や心を病んだとします。

この社員を叱咤激励してやる気を出させる(局所を
ゴリゴリ揉む)、という方法も、あるにはあります。
ですが、かえって悪化する場合も少なくありません
(いわゆる揉み返しなどは、こういうイメージで
とらえていただくと分かりやすいかもしれませんね)。

その社員を追い込んでいる人間関係なり、ノルマなり、
福利厚生なりに手を入れたほうが、スッキリ解決する
可能性が高いわけです。

例えば、内臓に問題がある場合、

 内臓に問題が生じる
→内臓を守るように、周囲の組織・筋肉が緊張する
→その緊張に引っ張られ、肩周囲の組織・筋肉が絶えず
 テンションのかかった状態になる
→肩の筋肉が疲れ、痛みを発する

……といったような、玉突き事故のような連鎖が起きることがあります。「なんで胃のツボが脚にあるのか」とか、「なんでマッサージ屋に
姿勢をアレコレ言われないといけないの」といったことの裏には、
こうした連鎖が絡んでいるのです。

痛みのあるところそのものが悪い、とは限らないわけで、
究極は切断した、そこにないはずの腕や足が痛む
幻肢痛(phantom pain)
なんていうものまであります。

このへんは、痛みの信号を受け取る脳の側の問題もあるのですが、
そのあたりはまた、稿をあらためて書きたいと思います。