遺伝子は、何が善なのか知っている、ってことになるんでしょうか。

人生に目的を持った上での行動によって幸福度が高い人と、
ただオノレの欲求を満たす行動で幸福度が高い人とでは、
遺伝子の状態が変わるよ、という研究結果だそうです。

善行は遺伝子に良い影響(2013.8.12掲載)

http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&view=article&id=4599:2013812&catid=21&Itemid=104

以下引用です。

 

Cole氏らは、健康な成人80人の遺伝子解析を実施し、2種類の幸せの感じ方について評価した。その結果、強い目的意識と人生の意義に由来する幸福度が 高い被験者(エウダイモニア的幸福)では免疫細胞に好ましい遺伝子発現がみられた。炎症遺伝子の発現レベルは低く、抗ウイルスおよび抗体遺伝子の発現レベルは高かった。

自己欲求の満足に関連する幸福度が高い被験者(享楽的幸福)では逆に、炎症遺伝子の発現レベルが高く、抗ウイルス、抗体遺伝子の発現レベルが低かった。ただし、享楽的幸福度が高い被験者が持つ感覚は、エウダイモニア的幸福度が高い被験者のそれと差はなかった。

Cole 氏は、「肯定的な感情のレベルはどちらも同程度に高いようだったが、ゲノムの反応は大きく異なっていた。今回の研究で、善行をすることと良い気分になるこ とは同程度の肯定的感情を生み出すが、ヒトゲノムに対する影響は大きく異なることが判明した。幸せの感じ方でヒトゲノムは意識よりもはるかに敏感なことは 明らかだ」と述べている。(HealthDay News 7月31日)

以上引用

「エウダイモニア的幸福度」の「エウダイモニア」とは耳慣れない言葉ですが、
かの大哲学者アリストテレスの著作に出てくる、人生の意味や至上の目的に
関わる幸福、というような意味合いらしいです。

「私は世のため人のため、凄いことを成し遂げた!」(あるいは
「成し遂げつつある!」)みたいな幸福感を抱ける人は、
比較的炎症や感染症を抱えづらい、ということになるのかな、と。

ヒトゲノム、そんな感じらしいので、みなさん、善いと思うことをしましょう(笑)。

でも引用記事の通りに人類の遺伝子発現が進み、自然淘汰がとことん起これば、
オノレの欲望だけ追及する人は相対的に減っていくことになるはずですが、
そうなると私のような人間はやがていなくなるかもしれません。

やばい。

個人的にチョット気になるのは、詳細なグループ分けの方法ですね。
いったい、幸せの種類の線引きは、どうやって行ったのでしょう?

こんなことが気になるのも、「世のため人のため……」と堂々と言う人が、
ちょっと困った人だったりする例も、しばしば見てきたからです
(皆さんのまわりにもいたでしょう?)。

私は微妙な問題の時は、ものすごく極端な例から考えるのですが、
例えば、

「人類が減った方がみんな幸せになるんだ!」

と大量殺人に手を染めようという人がいるとして、この人はこの人なりに
「世のため人のため」、とてつもなく頑張ってくれているわけですが、
殺される方からすると多いにありがた迷惑なわけです(余談ながら、
『逆襲のシャア』を想像しながら書いています)。

さて、この大量殺人者が感じているのは「エウダイモニア的幸福感」
なのか。「享楽的幸福」なのか。

酒をガバガバ飲み倒しても、本人が「これで景気が循環するのさ、
おれはそのために私費を投じているんだ……!」と思っていると
すると……?

被災地に、相手の都合を考えずに必要ないモノをがんがん送りつけて、
自分はいいことをしたと思っているボランティアの人は……?

……ということを考えると、どちらのタイプの幸福なのかって、
実は結構難しいハナシなのではないかと思うのです。

そういう例に対して、本人の遺伝子がどのように反応しているかは
多いに興味深いところであります(笑)。……あっ、むしろ、
ヒトゲノムのほうを判定基準にしてしまえばいいのか。

黒服の男たちが、情状酌量の余地を求める男の血液を採取・検査して

「貴様は人のためと言っていたが、貴様の炎症遺伝子の発現
増加が認められた。貴様の行動は、共同体の利益に寄与しているとは
言い難い。この享楽主義者め! 連行しろ!」

……みたいな。

なんだか、ベタベタな古ーいディストピア物のSFみたいですねぇ。
誰のための行動で、誰のための幸せなのか、遺伝子だけが知っている~。

「幸せについて本気出して考えてみた」

……とポルノグラフィティも歌ってましたが、人生は
一回こっきりなんで、皆さんも、そんなことを今回の研究結果を
ダシに考えてみるのも面白いかもしれません。

……では、シメには好きなマンガの、好きなセリフを。

「みんなで幸せになろうよ」 by 後藤喜一

 

さらに余談ながら、タイトルは赤川次郎のパロディです。はい。