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 ワタクシ、へなちょこではありますが、趣味で武術をかじっております。

 

 武術への興味が人体への興味、健康への興味と重なり、結果的にこんなことを生業にしているという意味では、大変なことになったなぁ、と(笑)

 

 そんなわけで、文部科学省による武道の必修化にはいささか興味がありまして(教員免許をとりあえず持っているペーパー教員でもありますし。国語科ですけど)、武道教育に関する特集をしている今月号の「月刊 秘伝」を購入。

 

 武術オタク向けのマニアックな雑誌と見られがちな「秘伝」としてはかなり思い切って社会と切り結ぼうという、冒険的な企画という印象を受けました。

 

 日本武道館理事・事務局長や現場の教師や国会議員、それに実際に武道・武術を教えている方々へのインタビューを通して、「武道教育ってそもそも何だろう」「武道教育というなら、こんな切り口もありじゃない?」と、読者にも問いを投げかける内容になっていて、実に面白いです。

 

 武道必修化は、学校の体育になじめず、大東流とシステマでようやく身体を動かす楽しさを知った身としては、いろいろ複雑な気持ちを抱かされる政策です。武道に触れることで、「あ、これって面白い」と思える子が増えればいいけれど、その半面、拒否反応を招いた場合が寂しいなぁ、と。最悪の場合、成長してから武道に興味を持つという回路まで閉ざしかねない気がします。学校で「必修」のものが楽しかった記憶がどちらかというと少ないものですから、なおさらそう思うのかもしれませんが(笑)。
 個人的に、自分にしっくりくる身体観、ひいて言えば人間のとらえ方(かたちとしては武術でもボディワークでも良いと思いますが)と出会えることは、ほんとうに人生を変えうるものだと思います。 

 

 だから私自身は、生徒がそういったものに至る道を広げうるならぜひやるべきだし、狭めうるならやめたほうがいい、でも現在の心証としては、後者になりそうな気配が強いので、反対派というよりは懐疑派、といった立場ですね。

 

 文科省が正式に認めるとしているのが剣道・柔道・相撲という、きわめて勝敗がわかりやすい(逆に言えば、目先の勝ち負けに意識がとらわれがちになる)種目なのも個人的には気になるところです。これは、現場での教え方にもよるでしょうけれど……。

 

 命のやりとりのために編み出された技術を、自分の身体で何とか実現しようとするなかで様々な発見や感動があるところが、私にとっての武術の楽しさなので、自分や他人の身体と向き合う楽しさが、勝った負けたに塗りつぶされてしまうとしたら、それは勿体無いなぁ、と思います。このあたり、労働の内発的な動機付けが賃金によって塗りつぶされてしまうことを説いた「デシの法則」に通じるところがあるかもしれません。

 

 ともあれ、ヘナチョコ武術愛好家としては、武道教育、ひいては身体を通じた教育、もっと言えば人と人との関係の在り方について、色々な角度から考えることが出来て、この特集は非常に興味深かったです。

 興味があればぜひご一読を。
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