変形性膝関節症、こんなことでお困りではありませんか
変形性膝関節症の定義
変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨が年齢を重ねることや日常生活での継続的な負荷により徐々に摩耗し、それに伴って膝関節に炎症や変形が生じて痛みや機能障害が現れる疾患です。軟骨は一度すり減ると自然に再生することはないため、進行性の病気として知られています。関節内で軟骨の破片が炎症を引き起こし、関節液の分泌が増加することで膝の腫れや水がたまる状態が起こります。また、骨の表面にトゲのような突起(骨棘)が形成され、関節の形状が変化していきます。
この症状に悩む人の推定患者数
厚生労働省の調査によると、日本国内における変形性膝関節症の自覚症状を有する患者数は約1,000万人とされており、X線診断による潜在的な患者数に至っては約3,000万人と推定されています。さらに詳細な調査では、40歳以上でX線診断される変形性膝関節症の患者数は2,530万人(男性860万人、女性1,670万人)に達し、女性に多く発症する傾向が明確に示されています。高齢化社会の進展に伴い、この数値は今後さらに増加することが予想されており、整形外科疾患の中でも最も患者数の多い疾患となっています。
この症状を放置するとどうなるか
変形性膝関節症は進行性の疾患であり、放置すると段階的に症状が悪化していきます。初期の軽い違和感や朝のこわばりから始まり、中期には日常生活の基本動作に支障をきたし、最終的には歩行困難となり寝たきりのリスクも高まります。具体的には、軟骨の完全な消失により骨同士が直接衝突し、激しい痛みが持続するようになります。痛みを避けるために身体活動が制限されることで筋力低下と体重増加が進み、さらに膝への負担が増すという悪循環に陥ります。また、外出機会の減少により社会的孤立や精神的な落ち込みを招き、最悪の場合、要介護状態に至る可能性があります。実際に、関節疾患は介護が必要となる主要な原因の一つとなっています。
変形性膝関節症の一般的な原因について
加齢による軟骨の摩耗と筋力低下
年齢を重ねることで膝関節の軟骨が徐々に摩耗し、関節のクッション機能が低下します。同時に太ももの筋肉(大腿四頭筋)や膝周囲の筋力が衰えることで、膝関節の安定性が損なわれ負担が増加します。
肥満による膝関節への過度な負担
体重の増加により膝関節にかかる負荷が増大し、軟骨の摩耗が加速されます。歩行時には体重の約3〜6倍の負荷が膝にかかるため、体重管理は非常に重要な要因となります。
O脚・X脚などの下肢アライメント異常
脚の形状の異常により膝関節の内側または外側に偏った負荷がかかり続けることで、特定部位の軟骨が早期に摩耗し変形が進行します。
過去のスポーツ外傷や膝の怪我
若い頃の激しいスポーツや事故による膝の損傷(半月板損傷、靭帯損傷、骨折など)が、長年を経て変形性膝関節症の発症要因となることがあります。
遺伝的素因と女性ホルモンの影響
家族歴がある場合や、閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少により軟骨の新陳代謝が低下し、発症リスクが高まることが知られています。
病院での一般的な対処法
薬物療法
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の内服薬や外用薬(湿布、塗り薬)により炎症と痛みを抑制します。また、関節内ヒアルロン酸注射により関節の潤滑性改善を図ります。
運動療法・理学療法
理学療法士の指導のもと、膝周囲の筋力強化(特に大腿四頭筋)と関節可動域の改善を目的とした運動プログラムを実施します。
装具療法
膝サポーターや足底板(インソール)、歩行補助具(杖)などを使用して膝関節への負担軽減と歩行の安定化を図ります。
物理療法
温熱療法、電気治療、超音波治療などにより血流改善と痛みの軽減を目指します。
生活指導・減量指導
体重管理、日常生活動作の改善指導、膝に負担をかけない生活スタイルの提案を行います。
手術療法
保存療法で効果が得られない場合、関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などの外科的治療が検討されます。
患者さんがよく抱く疑問
・変形性膝関節症は自然に治りますか?
・変形性膝関節症の人がやってはいけないことは?
・正座はもう一生できないのでしょうか?
・運動はした方がいいのか、控えた方がいいのか?
・痛み止めや湿布を長期間使用しても大丈夫ですか?
・膝に水がたまった時は抜いた方がいいですか?
・手術以外に根本的な治療法はありませんか?
・どのくらいの期間治療を続ける必要がありますか?
・家族にも遺伝する可能性はありますか?
・日常生活で特に注意すべきことはありますか?
山田治療院からの回答
変形性膝関節症は自然に治りますか?
すり減った軟骨が自然に再生することはありませんが、神経系の働きを整え、身体全体のバランスを改善することで症状の大幅な軽減は可能です。武術的な身体運用法を取り入れることで、膝への負担を根本的に減らすことができます。
変形性膝関節症の人がやってはいけないことは?
膝に過度な負担をかける動作は避けるべきですが、完全な安静は逆効果です。大切なのは膝だけでなく全身の協調性を高める動きを身につけることです。当院では個々の状態に応じた身体の使い方をお教えします。
正座はもう一生できないのでしょうか?
膝関節だけの問題ではなく、股関節や足首、体幹の使い方を整えることで正座が可能になる方も多くいらっしゃいます。神経系へのアプローチにより、関節の動きを改善していきます。
運動はした方がいいのか、控えた方がいいのか?
適切な運動は必要ですが、一般的な筋力トレーニングではなく、神経系の協調性を高める動きが効果的です。武術の身体運用を参考にした、膝に負担をかけない動作パターンを習得していただきます。
痛み止めや湿布を長期間使用しても大丈夫ですか?
薬物は対症療法に過ぎません。根本的な改善には、痛みの原因となっている身体の使い方や神経系の働きを整えることが重要です。薬に依存しない身体づくりを目指しましょう。
膝に水がたまった時は抜いた方がいいですか?
水がたまるのは身体の防御反応です。なぜたまるのかという根本原因を探り、神経系の働きを整えることで自然に改善することが多くあります。症状だけでなく原因に対処することが大切です。
手術以外に根本的な治療法はありませんか?
当院では神経科学に基づいた施術により、痛みの信号そのものを変化させるアプローチを行っています。多くの方が手術を回避し、痛みのない生活を取り戻されています。
どのくらいの期間治療を続ける必要がありますか?
症状の改善には個人差がありますが、神経系へのアプローチは比較的早期に効果が現れます。通常、数回の施術で変化を実感していただけます。その後は身体の使い方を定着させるための期間が必要です。
家族にも遺伝する可能性はありますか?
遺伝的要因もありますが、それ以上に重要なのは身体の使い方の習慣です。家族で似た動作パターンを身につけていることが多いため、適切な身体運用を学ぶことで予防可能です。
日常生活で特に注意すべきことはありますか?
膝だけに注目するのではなく、全身の連動性を意識することが重要です。歩き方、立ち方、座り方など基本的な動作を見直し、神経系の働きを最適化することで膝への負担を大幅に軽減できます。
変形性膝関節症についての情報の引用元
・厚生労働省「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について報告書」
・厚生労働省「令和5年患者調査傷病分類編(傷病別年次推移表)」
・森整形外科リハビリクリニック「変形性膝関節症よくある質問」
・肩膝腰クリニック「よくある質問集《変形性膝関節症》」
・オムロンヘルスケア「変形性膝関節症の治し方 – 運動および薬、手術による治療法」
・日本整形外科学会「変形性ひざ関節症の運動療法」
・生活習慣病予防サイト「ロコモティブシンドロームの国内推計患者数統計」
・各種医療機関の変形性膝関節症に関する専門情報